こんにちは、てどりんです。
「NISAは売っても枠が復活するから、こまめに売買してもいい」
これ、半分は合っていて、半分は勘違いです。
枠が復活するのは本当です。でも、そのありがたみを感じられる人は、いまのところほとんどいません。
この記事では、金融庁・国税庁の資料を確認しながら、利益が出ているときに売ったら税金はどうなるか、枠はどう戻るか、勘違いしやすい3つのポイントを整理します。
まず結論
| 利益に税金はかかるか | かからない(確定申告もいらない) |
| 枠は復活するか | する |
| いつ使えるか | 翌年から(売った直後ではない) |
| いくら戻るか | 買ったときの値段の分だけ(増えた分は戻らない) |
| 復活分は好きなだけ使えるか | 使えない。年間360万円まで |
| 損が出ていたら | ほかの口座の利益と相殺できない |
| そもそも気にする必要があるか | 枠を使い切るまでは、ほぼ関係ない |
最後の行がこの記事の本題です。
そもそも、NISAの枠は2種類あります
ここを混ぜてしまうと、話がわからなくなります。
| 枠の名前 | 金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 年360万円 | 1年間に買える上限 |
| 非課税保有限度額(総枠) | 1,800万円 | 一生のうちに持てる上限 |
年間投資枠の内訳は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、合わせて360万円です。総枠1,800万円のうち、成長投資枠で使えるのは1,200万円までという決まりもあります。
出典:金融庁「NISAを知る」、国税庁「No.1535 NISA制度」
「復活する」と言われているのは、下の1,800万円のほうです。
(枠の使い分けについてはつみたて投資枠と成長投資枠の違いにまとめています)
勘違い①「売った直後に使える」→ 使えるのは翌年
金融庁のサイトには、こう書かれています。
商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になります。
出典:金融庁「NISAを知る」
「翌年以降」です。
3月に売っても、その年のうちには戻りません。次の年の1月になってから使えるようになります。
「売って、すぐ買い直す」ということはできない、ということです。
勘違い②「増えた分も戻る」→ 戻るのは買ったときの値段だけ
ここが一番の勘違いポイントだと思います。
金融庁のよくある質問には、こう書かれています。
非課税保有限度額については、買付け残高(簿価残高)で管理されます。このため、NISA口座内の商品を売却した場合には、当該商品の簿価分の非課税枠を翌年以降に再利用できることとなります。
出典:金融庁「よくある質問」
「簿価(ぼか)」という言葉が出てきますが、難しく考えなくて大丈夫です。買ったときにいくら払ったか、という意味です。
具体例で見ます。
| 金額 | |
|---|---|
| 買ったとき(簿価) | 100万円 |
| 売ったとき(時価) | 150万円 |
| 翌年に復活する枠 | 100万円 |
50万円増えていても、戻ってくる枠は100万円分です。金融庁のページにも「売却した場合、翌年復活する金額は簿価の100万円です」という同じ例が載っています。
利益の50万円は非課税で手元に残ります(そこは損をしません)。ただ枠としては戻らない、ということです。
一部だけ売った場合も、考え方は同じです。減る枠(=翌年に戻る枠)は、売ったときの値段ではなく、買ったときの値段で計算されます。実際にいくら戻るかは、証券会社のNISAの画面で確認できます。
出典:日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」Q11(2025年9月)
利益が出ているときに売ると、税金はどうなる?
税金はかかりません。確定申告もいりません。
日本証券業協会のQ&Aには、こう書かれています。
NISA 口座に受け入れている上場株式等の配当等や譲渡益は非課税であるため、確定申告をする必要はありません
さきほどの例(100万円で買って150万円で売った)で、NISAと特定口座を比べるとこうなります。
| NISA | 特定口座 | |
|---|---|---|
| 利益 | 50万円 | 50万円 |
| 税金(20.315%) | 0円 | 101,575円 |
| 手元に残る利益 | 50万円 | 398,425円 |
もうひとつ、あまり知られていない点があります。NISAの利益は「合計所得金額」に入らないので、配偶者控除・配偶者特別控除などの税金の扶養の判定に影響しません。くわしくは、扶養に入っている人が確定申告してはいけない理由で書いています。
出典:日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」Q31、国税庁「No.1535 NISA制度」
逆に、損が出ているときに売ると
ここは注意が必要です。NISAで出た損は、税金の上では「なかったもの」として扱われます。
国税庁のページには、こう書かれています。
非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます。
特定口座なら、ほかの株の利益と損を相殺(損益通算)したり、翌年以降に損を持ち越したり(繰越控除)できます。NISAの損では、どちらもできません。
出典:国税庁「No.1535 NISA制度」
利益が出ても税金はかからない代わりに、損が出ても税金の上では何の得にもならない。NISAは「下がっても売らずに持ち続ける」前提の口座だと、私は考えています。
【本題】枠が余っているうちは、復活しても意味がありません
ここからが、あまり書かれていない話です。
枠が復活してうれしいのは、「枠を使い切っている人」だけです。
まだ枠が余っている人にとっては、売って復活させなくても、もともと使っていない枠がそこにあるからです。
では、いつ使い切るのか。最速で計算するとこうなります。
| 計算 | |
|---|---|
| 一生の枠 | 1,800万円 |
| 1年に入れられる上限 | 360万円 |
| 1,800万 ÷ 360万 | = 5年 |
毎年360万円という上限いっぱいを5年間続けて、ようやく1,800万円が埋まります。
つまり枠の復活が効いてくるのは、どんなに急いでも6年目からということです。
| 年 | その年までの累計 | 残っている枠 |
|---|---|---|
| 1年目 | 360万円 | 1,440万円 |
| 2年目 | 720万円 | 1,080万円 |
| 3年目 | 1,080万円 | 720万円 |
| 4年目 | 1,440万円 | 360万円 |
| 5年目 | 1,800万円 | 0円 |
| 6年目 | — | ここで初めて復活が意味を持つ |
そして年360万円は、月にすると30万円です。これを5年間、休まず続けられる人がどれだけいるでしょうか。
現実的な金額で計算すると、こうなります。
| 毎月の積立額 | 年間 | 1,800万円を使い切るまで |
|---|---|---|
| 3万円 | 36万円 | 50年 |
| 5万円 | 60万円 | 30年 |
| 10万円 | 120万円 | 15年 |
| 20万円 | 240万円 | 7年6か月 |
| 30万円(上限) | 360万円 | 5年 |
月10万円でも15年かかります。
NISAを使えている人は6人に1人という記事を書きましたが、多くの人にとって枠の復活は、10年以上あとの話です。
いま気にすることではありません。
勘違い③「復活したら、その分まとめて入れられる」→ 年360万円のまま
もうひとつ、見落とされやすい点です。
たとえば1,000万円分(簿価)を売ったとします。翌年、1,000万円の枠が復活します。
では翌年、1,000万円を一気に入れられるでしょうか。
入れられません。年間投資枠の360万円は、それとは別に毎年かかってくる上限だからです。
| 復活した枠 | 1,000万円 |
| その年に入れられる金額 | 360万円まで |
| 元に戻すのにかかる年数 | 約3年 |
復活した枠を使い切るのにも、また年数がかかります。
「一度売って、あとでまとめて戻せばいい」という考え方は、ここで成り立たなくなります。
結局、誰にとって関係がある話なのか
整理すると、こうなります。
| こういう人 | 復活の話は |
|---|---|
| これから始める・積立中 | 関係ない(枠が余っている) |
| 1,800万円を使い切った | 関係ある |
| 使い道が決まっているお金を、一時的に置いている | 関係ある |
| 商品を乗り換えたい | 関係あるが、慎重に |
最後の「乗り換え」は補足が必要です。
たとえば手数料の高い商品を買ってしまったので、オルカンに変えたいというとき、売って買い直すことになります。このとき枠は翌年まで戻ってこないので、その年の枠を余分に使うことになります。
「枠は復活するから気軽に乗り換えられる」ではなく、「乗り換えは1年分の枠を使う覚悟でやる」と考えたほうが正確です。
(私が特定口座からNISAへ移したときの話はこちらに書きました)
私はどうしているか
売っていません。
理由は単純で、売る理由がないからです。
私は「安くなったら買おう」で失敗しています。そのときに学んだのは、売り買いの判断を挟むほど成績が悪くなるということでした。
枠が復活すると聞くと「じゃあ一度売って、下がったら買い直そう」と考えたくなります。でもそれは、枠の話ではなく、タイミングを当てにいく話です。別の問題にすり替わっています。
暴落が来ても売らないと決めているので、そもそも復活の出番がありません。
まとめ
| 覚えておくこと |
|---|
| 利益に税金はかからない。確定申告もいらない |
| 損が出ても、ほかの口座の利益とは相殺できない |
| 枠は復活する。ただし翌年から |
| 戻るのは買ったときの値段の分だけ |
| 復活しても、年360万円の上限は変わらない |
| 1,800万円を使い切るまでは、そもそも関係ない |
| 月10万円の積立なら、関係してくるのは15年後 |
「売っても枠は戻る」は本当ですが、戻ってうれしい状況になるまでには、何年もかかります。
制度を正しく知ることと、いま自分に関係があるかを見分けることは別です。
枠の復活は知識として知っておけば十分で、行動を変える理由にはならない——というのが、調べてみた私の結論です。
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