こんにちは、てどりんです。

特定口座の記事で「源泉徴収ありを選べば確定申告は不要」と書きました。

ただ、これには書き足りていなかったことがあります。

扶養に入っている人にとって、確定申告は「してもいい」ものではなく「しないほうがいい」ものです。

外国税額控除や配当控除で数千円取り戻したせいで、扶養から外れたり保険料が上がったりすることがあります。

まず結論

選ぶ口座 特定口座(源泉徴収あり)
確定申告 しない
外国税額控除・配当控除 取りに行かない
理由 戻る金額より、失う金額のほうが大きいことがある

「損しないために申告する」つもりが、逆になることがあります。


そもそも、源泉徴収なしを選ぶと申告義務が発生します

特定口座には2種類あります。

口座 どうなるか
源泉徴収あり 証券会社が税金を引いてくれる。申告しなくていい
源泉徴収なし 自分で計算して申告する

国税庁は源泉徴収ありについて、こう書いています。

特定口座内で生じる所得に対して源泉徴収することを選択した場合には、その特定口座(略)内の上場株式等の譲渡による所得を申告不要とすることができます。

出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」

扶養に入っている人ほど、「あり」を選んでください。 「なし」を選ぶと、利益が出たときに申告する側にまわることになります。


2024年から、住民税だけ別扱いにする方法がなくなりました

ここが以前と大きく変わったところです。

昔は「所得税では申告して還付を受け、住民税では申告不要にする」という方法がありました。還付だけもらって、保険料には響かせないやり方です。

これは使えなくなりました。

令和6年度から、所得税と住民税(市・県民税)の課税方式を一致させることとなり、所得税と住民税とで異なる課税方式を選択することができなくなります。

出典:東京都北区「令和6年度より上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等について所得税と異なる課税方式を選択することが出来なくなりました」

いまは、所得税で申告すれば住民税にも自動でついてきます。 片方だけ、はできません。

これは一部の自治体の話ではなく、全国共通の改正です。中野区・水戸市・静岡市・神戸市・姫路市など、どこも同じ説明をしています。


申告すると、何に響くのか

中野区が、影響するものを並べています。

所得税で上場株式等の配当所得等や譲渡所得を確定申告すると、これらの所得は住民税でも合計所得金額に算入されます。その結果、扶養控除、配偶者控除の適用、非課税判定、各種保険料の算定などに影響が出る場合があります。

出典:中野区「令和6年度適用:上場株式等に係る配当所得等について課税方式の統一」

整理するとこうなります。

響くもの 中身
配偶者控除・扶養控除 合計所得金額が増えて、外れることがある
国民健康保険料 所得が増えると上がる
介護保険料 段階が上がることがある
後期高齢者医療保険料 同じく上がる
住民税の非課税判定 非課税世帯向けの給付が受けられなくなることがある

配偶者控除の基準はこうなっています。

年間の合計所得金額が58万円以下(略)給与のみの場合は給与収入が123万円以下

出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」(令和7年分以降)

申告しなければ、株の利益はこの58万円に入りません。 申告した瞬間に入ります。

自治体が「やめておいたほうがいい」と書いています

刈谷市の説明が、いちばんはっきりしています。

確定申告をしない場合(申告不要制度を選択した場合)、これらの所得は介護保険料の算定対象となる所得に含まれません。 確定申告をした場合(総合・分離課税を選択した場合)、これらの所得は介護保険料の算定対象となる所得に含まれます。 (略)見込まれる税額上の還付分や減額分よりも介護保険料の増額分が上回る場合があります

出典:刈谷市「株式等の譲渡所得等の介護保険料への影響」

横浜市も江東区も、同じ注意書きを出しています。

役所が先回りして「戻る額より増える額のほうが大きいことがある」と言っているわけです。


【重要】健康保険の扶養は、申告と関係なく判定されます

ここを混同すると危険です。

「税金の扶養」と「健康保険の扶養」は、別のものさしです。

基準 申告しなければ避けられる?
税金の扶養(配偶者控除など) 合計所得58万円以下 避けられる
健康保険の扶養 年収130万円未満 避けられない

健康保険組合の説明には、こうあります。

株等を保有し続けている場合は、取引回数に関係なく恒常的収入と見なします。 譲渡収入が認定基準年額130万円以上(60歳以上の方、又は公的な障害年金を受給している方の場合は180万円以上)であった場合、翌年の1月1日より被扶養者の要件を欠くことになります。

出典:azbilグループ健康保険組合「被扶養者に株等の収入がある場合の取扱いについて」

そして提出書類の欄には、「確定申告が原則免除のもの(特定口座を保有し、源泉徴収口座を選択した場合等)」という区分があり、そこでも年間取引報告書の提出を求めています。

つまり、申告していなくても健保には見られます。

さらに2026年4月から、扶養の判定を簡単にする方法ができましたが、日本年金機構の条件はこうです。

労働契約内容がわかる書類に記載のある賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であり、かつ、他の収入が見込まれず

出典:日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」

「給与収入のみである」という申立てが必要なので、株の利益があるとこの簡単な方法は使えません。

健保組合ごとに基準は違います。 大きな利益が出そうなときは、先に保険証に書いてある健保に確認してください。


年金生活者は、もっと影響が大きいです

会社員は、給与で保険料が決まります。 だから株の利益を申告しても、健康保険料は動きません。

年金生活者は違います。

響くもの
国民健康保険料・後期高齢者医療保険料(所得で決まる)
介護保険料の段階
70歳以上の医療費の窓口負担割合(1割・2割・3割)

横浜市は、窓口負担割合まで名指ししています。

確定申告をしない場合、(略)国民健康保険料の算定及び70歳以上の医療費の自己負担割合の判定対象には含まれませんが、(略)確定申告をする場合は、その適用後の所得金額が保険料の算定及び(略)判定対象に含まれます。

出典:横浜市「株式等の譲渡所得や配当所得などにより確定申告する方へ」

1割が2割になれば、医療費は倍です。数千円の還付とは、桁が違う話になります。


いっぽうで、影響しなくなったものもあります

古い情報が出回っているので、ここははっきり書いておきます。

制度 現在
児童手当 所得制限なし。対象は「児童を養育している方」
高校の授業料支援 所得制限が撤廃

文部科学省の案内には、こうあります。

高等学校等の授業料支援制度の改正により、所得制限が撤廃され、多くの方が授業料の支援を受けることができるようになりました。 支給上限額 45万7200円 【所得上限なし】

出典:文部科学省「高校生等への修学支援」(令和8年度版)

「確定申告すると児童手当が減る」は、いまは当てはまりません。 気にすべきは保険料と扶養控除のほうです。


外国税額控除・配当控除を取りに行く前に

この2つは、申告しないと受けられません。 だから「もったいない」と感じます。

でも、扶養に入っている人は先にこちらを確かめてください。

確かめること
戻る金額はいくらか(配当が少なければ数千円のこともあります)
申告すると合計所得58万円を超えないか
国保なら、保険料がいくら上がるか(自治体の窓口で試算してもらえます)
健保の扶養の130万円に触れないか

戻る額のほうが大きいと確認できたときだけ、申告してください。

私の考えでは、扶養に入っていて配当が少額なら、わざわざ取りに行く必要はありません。 手間に対して戻る額が小さいうえ、失うものが大きすぎます。


ふるさと納税で確定申告する人へ

ここは扶養の話ではありませんが、誤解が多いので書いておきます。

確定申告する=すべての収入を書かなければいけない、ではありません。

私は扶養には入っていませんが、ふるさと納税のために毎年確定申告しています。 それでも株の欄は書いていません。

特定口座(源泉徴収あり)の利益は申告しなくていい
ふるさと納税や医療費控除だけを申告できる
口座ごとに、申告するかどうか選べます

「申告するなら全部書かなきゃ」と思って株の欄まで埋めると、書かなくてよかった所得を自分から足すことになります。

国保に入っている人や扶養に入っている人は、ここで保険料が上がります。

なお扶養に入っていない会社員は、また別の判断になります。特定口座に日本の個別株の配当があるなら、確定申告して配当控除を使ったほうが有利になるケースがあるからです。目安は課税所得695万円以下(年収でいうと1,100万円あたりまで)です。

ただし配当控除の対象は日本株の配当だけです。オルカンやS&P500は対象外で、外国株を直接持っている場合も対象外です。国税庁は、外貨建て資産の割合が75%を超える投資信託について「配当控除(税額控除)の対象となりません」としています。

出典:国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」、国税庁「外貨建資産割合又は非株式割合(75%超)」

そしてもうひとつ。総合課税で配当控除を使うと、その年の売却損との損益通算ができなくなります。 損が出た年は、配当控除より損益通算のほうが得になることがあります。

出典:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」

NISAなら最初から非課税なので、そもそも関係ありません。


この記事の注意点

健保組合ごとに基準が違います。必ずご自身の健保に確認してください
保険料の料率は自治体ごとに違います
損益通算や繰越控除のために申告が必要な場合は、この記事の話とは別に判断が要ります
税制は変わります。2027年1月から防衛特別所得税が始まりますが、復興特別所得税が下がるため合計20.315%は変わりません

まとめ

覚えておくこと
扶養に入っているなら「源泉徴収あり」で、申告しない
2024年から、住民税だけ別扱いにはできない
申告すると、保険料と扶養控除に響く
健康保険の扶養(130万円)は、申告と関係なく判定される
児童手当と高校の授業料支援は、いまは所得制限なし
ふるさと納税を申告するときも、株の欄は書かなくていい

数千円を取り戻すために、何万円も払うことにならないように。 それだけ覚えておけば十分です。

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てどりん
てどりんひとこと 「控除は取れるだけ取る」が逆になる人がいます。扶養に入っているなら、動く前に確認を。

※この記事は個人の感想です。税制・社会保険制度は2026年8月時点のもので、変更される可能性があります。保険料の料率や被扶養者の認定基準は、お住まいの自治体・加入している健康保険組合によって異なります。実際の判断はお住まいの市区町村、加入先の健康保険組合、または税理士にご確認ください。投資には元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。