こんにちは、てどりんです。

ねんきん定期便の見方という記事で、50歳未満の定期便に書かれている年金額は、今までの実績だけの金額だという話を書きました。

この記事では、その先の話をします。

ねんきん定期便には、書かれていないことがあります。

  • 保険料の欄に、会社が払っている分は入っていない
  • 年金は積み立てではなく、「仕送り」の仕組みである
  • 将来、給付水準は下がる見通しになっている

「年金は損か得か」という話は感情的になりやすいので、厚生労働省の公式データだけを使って、なるべく正直に整理します。

「これまでの保険料納付額」に、会社が払った分は入っていません

ハガキには「1.これまでの保険料納付額(累計額)」という欄があります。今まで納めてきた保険料の合計です。

ここに書かれている厚生年金保険料は、あなたの給料から引かれた分だけです。

会社は、同じ額をもう一度払っています

厚生年金の保険料率は18.3%で固定されていて、これを会社と本人で半分ずつ負担します。つまり本人が負担しているのは9.15%だけです。

負担している人 定期便に載るか
9.15% 本人(給料から天引き) 載る
9.15% 会社 載らない

日本年金機構も、これをはっきり認めています。

保険料納付額には、被保険者(ご本人)負担分の保険料の額を表示しており、事業主負担分は含まれておりません

理由は「毎月の給与から控除される実際の保険料額を本人に確認してもらうため」とされています。実際、定期便には「お手持ちの給与明細等に記載されている保険料額と照らし合わせて確認できます」とも書かれています。

つまり、実際に納められている額は、書かれている金額のおよそ2倍です。

(なお、自営業や学生などが納める国民年金保険料には事業主負担がなく全額が本人負担なので、こちらは実際の納付額そのものが載ります。)

年金額の計算には、会社の分も反映されています

先に、公平な話をしておきます。

年金額のうち報酬比例部分は、本人が納めた保険料の額ではなく、「平均標準報酬額」——つまり給料そのもの——をもとに計算されます。 日本年金機構の説明でも、報酬比例部分は「年金の加入期間や過去の報酬等に応じて決まるもの」とされています。

なので「会社の分が載っていない=その分もらえない」ということではありません。

それでも「会社が半分払ってくれてお得」とは言い切れません

ここが、この記事で一番書きたかったところです。

厚生労働省は、世代ごとに「払った保険料」と「もらえる年金」の倍率を試算しています。

生まれ年 負担給付比率
1935年生まれ 8.3倍
1955年生まれ 3.2倍
1975年生まれ 2.4倍
1985年生まれ以降 2.3倍

若い世代でも2.3倍あるように見えます。しかしこの試算には、会社が払っている分が入っていません。

厚生労働省は、含めない理由をこう説明しています。

厚生年金の事業主負担分は労務費に含まれるが、賃金そのものではない。公的年金制度による事業主への義務付けではじめて生じる負担であることから、事業主負担を賃金と同視して論じることには問題があり、保険料負担額には事業主負担分を含めずに比較している

制度の考え方としては筋が通っています。

ただ「会社の負担も、もとをたどれば自分の人件費だ」と考えるなら、話は変わります。

同じ資料の1985年生まれのケースで、保険料負担額5,100万円を単純に2倍して計算すると、倍率はおよそ1.2倍まで下がります(これは公式の数字ではなく、私の単純計算です)。

しかもこの試算は「夫が会社員、妻が専業主婦」という夫婦のモデルです。妻の基礎年金や遺族年金まで含めた金額なので、単身の会社員なら、さらに条件は厳しくなります。

「会社が半分払ってくれている」は事実。でも「だからお得」とまでは言えません。

なお、それでも倍率が1を超えるのは、基礎年金の2分の1が税金(国庫負担)でまかなわれているからです。保険料だけで成り立っている制度ではありません。

正直、定期便に会社負担分も書いてほしい

これは私の意見です。

いま定期便に載っているのは本人負担分だけなので、自分の給料からいくら年金に回っているのかは分かっても、社会全体でいくら自分に投じられているのかは分かりません。

両方書いてあったほうが、判断材料としてずっと誠実だと思います。

年金は「積立」ではなく「仕送り」です

もう1つ、押さえておきたい前提があります。

自分が払った保険料が、貯金のように積み立てられて自分に返ってくる仕組みではありません。

いま現役世代が払っている保険料は、いま年金を受け取っている高齢者に渡っています。 厚生労働省もこれを「世代間扶養」と呼んでいます。

世代間扶養を基本的な考え方として運営している公的年金制度では、賃金の一定割合の保険料拠出を求め、給付額も賃金水準の上昇を反映することが基本的な仕組みとなっている

だから、「いくら払ったか」と「いくらもらえるか」は、直接つながっていません。 自分が受け取るときの年金は、そのときの現役世代が払ってくれるお金から出ます。

先ほどの「倍率」の話が、どこか腑に落ちない感じがするのは、これが理由です。 そもそも自分の積立を回収する制度ではないので、損得の計算になじみません。

将来、水準が下がることは織り込まれています

そしてこの仕組みは、少子高齢化が進むほど苦しくなります。

年金の水準をあらわす指標に「所得代替率」があります。

これは「現役男子の平均手取り収入額に対する、モデル世帯の年金額の比率」です。ここでいうモデル世帯は夫婦2人で、2024年度はこうなっています。

金額(月額)
夫婦2人の基礎年金 13.4万円
夫の厚生年金 9.2万円
年金の合計 22.6万円
現役男子の平均手取り 37.0万円
所得代替率 61.2%

厚生労働省の令和6年(2024年)財政検証では、この数字が将来こうなると見込まれています。

ケース 調整終了後の所得代替率
成長型経済移行・継続 57.6%(2037年度)
高成長実現 56.9%(2039年度)
過去30年投影 50.4%(2057年度)

どのケースでも下がります。 これは想定外の事故ではなく、マクロ経済スライドという仕組みで、現役人口の減少や平均余命の伸びに合わせて給付水準が自動的に調整されるようになっているためです。

「目減り」の意味は、少し注意が必要です

ここは正確に書いておきます。

確実に下がるのは「所得代替率」——つまり現役世代の手取りと比べたときの割合です。

一方、金額そのものは経済次第で、必ず減るとは限りません。 同じ財政検証では、物価上昇分を割り戻した実質の年金額(夫婦のモデル年金)がこう見込まれています。

ケース 2024年度 2060年度
成長型経済移行・継続 22.6万円 33.8万円
過去30年投影 22.6万円 21.4万円

経済がうまくいけば金額は増えるが、それ以上に現役の給料が増えるので、比率としては下がる。 そういう構造です。

いずれにしても、現役時代と同じ生活水準を年金だけで保つ設計にはなっていません。

だから、上乗せが必要になります

ここまでをまとめると、こうなります。

  • 保険料は会社も同額払っている。ただし「だからお得」とは言えない
  • 年金は仕送りの仕組みで、払った分が返ってくるわけではない
  • 水準は今後下がることが前提になっている

ただ、これは「年金はあてにならないから払い損だ」という話ではありません。

公的年金には、生きている限り一生受け取れるという、自分では絶対に作れない強みがあります。長生きするほど価値が出る仕組みで、土台としては十分に頼りになります。

問題は、土台だけで今と同じ暮らしができる設計にはなっていないという一点です。

  • 公的年金 = 土台。自分ではほぼ変えられない
  • NISA・iDeCo = 上乗せ。自分で決められる

変えられないものを心配するより、変えられるほうに手をつけたほうが早いと思っています。

まとめ

覚えておくこと
保険料率 18.3%を会社と本人で折半(本人9.15%)
定期便の保険料欄 本人負担分だけ。実際はおよそ2倍納められている
年金額の計算 保険料の額ではなく給料(平均標準報酬額)がもと
世代別の倍率 1985年生まれ以降は2.3倍(会社負担を含めない場合)
会社負担を含めると 単純計算で約1.2倍まで下がる
年金の仕組み 積立ではなく仕送り(世代間扶養)
将来の水準 所得代替率 61.2% → 50.4〜57.6%
下がるのは 現役世代と比べた割合。金額は経済次第

一番大事なのは、これだけです。

年金は損得を計算する制度ではなく、長生きに備える土台です。足りない分は自分で用意する。それだけの話です。

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土台の心配をするより、上乗せを自動化するほうが早いです。クレカ積立なら毎月勝手に買われます。

一緒に少しずつ学んでいきましょう!


てどりん
てどりんひとこと 損得を計算しはじめると、どうしてもモヤモヤします。制度の設計上そうなっているだけなので、あまり気にしすぎないほうがいいと思っています。手を動かせるのは上乗せのほうです。

※この記事は公開情報をもとにした解説です。年金制度の詳細や試算の前提は変更される場合があります。最新情報は日本年金機構および厚生労働省の財政検証ページでご確認ください。個別の年金額や手続きについては、年金事務所にお問い合わせください。