こんにちは、てどりんです。

「金利が上がってきたから、そろそろ債券も」という話を、よく聞くようになりました。

たしかに10年国債の利回りは2.9%台です。数年前の0%台からすると、まるで別の商品です。

そこで私も、いったん自分の考えを疑ってみることにしました。いま本当に債券を買うべきなのかを、公式のデータだけで計算しなおしてみたのです。

結論から言うと、私は買いません。

理由は「なんとなく株のほうが好きだから」ではありません。数字を出したら、実質でマイナスだったからです。

この記事では、その計算の中身を全部お見せします。

1. まず「リスクなしでもらえる利回り」を調べました

投資の世界では、ほぼ確実にもらえる利回りのことを「リスクフリーレート」と呼びます。

むずかしい言葉ですが、中身は単純です。国にお金を貸したときの利回りのことだと思ってください。

会社は倒産しますが、日本という国が円建てのお金を返せなくなる可能性は、ほぼありません。だから「これ以下ならわざわざリスクを取る意味がない」という基準線になるのです。

では、いまいくらなのか。財務省が毎日公表している数字がこちらです。

年限 利回り(年)
1年 1.557%
2年 1.848%
5年 2.258%
10年 2.896%
20年 3.717%
30年 3.961%

出典:財務省「国債金利情報」令和8年9月8日時点

たしかに上がっています。 10年で2.9%、30年なら約4%です。

ただし、この利回りがそのままもらえるわけではありません

ここが最初の落とし穴でした。

この表は市場で売買されている国債の利回りです。銀行や保険会社が何億円という単位で取引している世界の数字です。

私たち個人がいちばん普通に買うのは、「個人向け国債」という別の商品です。そしてその利回りは、上の表よりかなり低いのです。

商品 表面利率(年) 税引後
変動10年(第198回) 1.95% 1.5538575%
固定5年(第186回) 2.24% 1.7849440%
固定3年(第196回) 1.96% 1.5618260%

出典:財務省「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」令和8年9月9日現在。募集期間 令和8年9月3日~30日、発行日 令和8年10月15日

10年もので2.896%ではなく、1.95%。 1ポイント近く違います。

なぜ低いのか。変動10年の利率は、市場の金利にそのまま連動するのではなく、0.66を掛けた数字になる決まりだからです。

出典:財務省「個人向け国債」金利設定方法:基準金利×0.66

つまり「国債が2.9%になった」というニュースを見て個人向け国債を買うと、思っていた数字とは違うものが手に入るということです。ここは最初に押さえておきたいところでした。

2. 税金とインフレを引くと、実質マイナスでした

さて本題です。

利回り1.95%は、そのまま手元に残るわけではありません。2つ引かれるものがあります。

引かれるもの①:税金 20.315%

国債の利子には20.315%の税金がかかります。所得税15.315%(復興特別所得税を含む)+住民税5%です。

出典:財務省「個人向け国債」国債の利子は、受取時に20.315%分の税金が差し引かれます

1.95%から2割引かれるので、実際に受け取れるのは1.55%です。財務省のページにも、税引後1.5538575%と書かれています。

引かれるもの②:インフレ

こちらのほうが見落とされがちです。

2026年7月の消費者物価指数は、前年同月比1.9%上昇でした。

指数 前年同月比
総合 1.9%上昇
生鮮食品を除く総合 1.8%上昇
生鮮食品及びエネルギーを除く総合 1.9%上昇

出典:総務省「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分」令和8年8月21日公表

お金の「額」が1.55%増えても、モノの値段が1.9%上がっていたら、買えるものは減っています。

引いた結果

この2つを引いた数字を「実質利回り」と呼びます。買えるものが本当に増えたかどうかを表す数字です。

計算するとこうなりました。

商品 税引前 税引後 実質(インフレ控除後)
個人向け国債 変動10年 1.95% 1.55% −0.35%
個人向け国債 固定5年 2.24% 1.78% −0.12%
個人向け国債 固定3年 1.96% 1.56% −0.34%

税引後=表面利率×0.79685。実質=税引後−1.9%(2026年7月の総合指数の前年同月比)

全部マイナスです。

「金利が上がった」と言われている今でも、個人向け国債を買うと、買えるものは毎年少しずつ減っていく計算になります。

これが「インフレで債券の魅力はまだ薄い」と私が考える理由です。金利は上がりましたが、物価はそれ以上に上がっているのです。

「市場の利回り」で買う方法も、一応あります

ここまで調べて気づいたのですが、個人でも市場の利回りに近い国債を買えます。

「新窓販国債」(しんまどはんこくさい)という商品です。個人向け国債と同じく、証券会社や銀行の窓口で買えます。

商品 応募者利回り 税引後 実質
新窓販 10年(第383回) 2.943% 2.385% +0.49%
新窓販 5年(第187回) 2.171% 1.725% −0.18%
新窓販 2年(第488回) 1.672% 1.327% −0.57%

出典:財務省「新窓販国債発行条件」令和8年9月債。税引後の数値は財務省の記載。実質=税引後−1.9%

10年なら、たしかに実質プラス(+0.49%)です。

ただし、個人向け国債とはまったく別の商品でした。

個人向け国債 新窓販国債
最低いくらから 1万円 5万円
途中でやめるとき 国が額面100円で買い取る 市場で売る。価格しだいで元本割れ
金利が上がったら 変動10年は利率が上がる 固定。上がらない

出典:財務省「新窓販国債」市場でいつでも売却が可能(売却益/売却損が発生)。国の買い取りによる中途換金制度はありません

実質プラスを取りにいくと、元本保証を手放すことになります。

そして5年より短いところは、新窓販国債でも実質マイナスでした。ちなみに5年で比べると、個人向け国債の固定5年(2.24%)のほうが、新窓販国債の5年(2.171%)より高いです。元本保証がついて、利回りも上ということになります。

それでも私は、新窓販国債より変動10年だと思います

実質+0.49%は、たしかに魅力的に見えます。でも、いまは金利が上がっている途中です。

この局面で10年固定を選ぶと、こうなります。

金利がさらに上がったら 新窓販10年(固定) 個人向け国債 変動10年
受け取る利子 変わらない 半年ごとに増える
途中でやめるとき 時価が下がり、売却損 額面100円で国が買い取る

新窓販国債は、金利が上がると二重に不利になります。 利子は増えないのに、売るときの値段は下がるからです。

いっぽう変動10年は、金利が上がれば利子が増え、元本は減りません。 まったく逆の動きをします。

そもそも実質+0.49%は「10年間、いまの条件のまま持ち切れたら」の数字です。10年は長いです。 その間に金利がまったく動かないほうが、むしろ考えにくいと思っています。

だから私は、新窓販国債より個人向け国債の変動10年だと考えています。 目先の0.49%より、金利についてきて、元本が減らないことのほうが大事だと思うからです。

変動10年の仕組みそのものは、定期預金と個人向け国債、どっちがいい?で詳しく書きました。

ただし、これは「これから金利は上がる」と思っているからの判断です。逆にこれから下がっていくと思うなら、いまの高い利率を10年ぶん固定できる新窓販国債のほうが有利になります。ここは正解がある話ではなく、金利の先をどう見るかで答えが変わります。

3. それでも、私が買わない理由

ここまで、個人向け国債と新窓販国債の実際の数字を見てきました。定期預金や社債とも比べたのですが、それは別の記事にまとめました。並べてみると、置いておくならまだ個人向け国債の変動10年がマシという結論になります。

それでも私は買っていません。

理由は株式との差が大きすぎるからです。

株式は220年で年率6.9%の記事で紹介したとおり、ジェレミー・シーゲルの調査では、1802年から2021年までの株式の実質リターンは年率6.9%でした。この6.9%は、すでにインフレを引いたあとの数字です。

並べてみます。

実質リターン
株式(220年の平均) +6.9%
個人向け国債 変動10年 −0.35%
楽天銀行 定期5年 −1.10%

株式と個人向け国債の差は、7.25ポイントです。

「金利が上がったから債券も」という話は、この7.25ポイントを埋めるほどの変化ではありませんでした。 0%が1.95%になっても、実質ではまだマイナスなのですから。

そもそも、いまの日本の国債は歴史的にも低いです

ここで正直に補足しておきます。シーゲルの調査の「長期国債」は、実質で年3.6%ありました。

出典:シーゲル『株式投資 第6版』の株式リスクプレミアム(長期債に対して3.3%)から逆算した概算。詳しくは株式は220年で年率6.9%

実質リターン
株式(220年の平均) +6.9%
長期国債(220年の平均) 約+3.6%
いまの日本の個人向け国債 変動10年 −0.35%

同じ「債券」でも、中身がまったく違います。

歴史的に見れば、債券は「株より少ないが、ちゃんと増える資産」でした。いまの日本の債券は、そうではありません。

だから私は、「債券はダメだ」とは思っていません。 「いまの日本の債券は、まだ割に合わない」というだけです。

私にはまだ「守る資産」がありません

もうひとつ、これは考え方の問題です。

債券を持つ目的は、値動きを小さくすることです。持っている資産が大きくて、それが半分になったら生活が壊れる——そういう人には必要な仕組みです。

でも有名なポートフォリオが会社員に合わない理由にも書いたとおり、私にはまだ、守らなければいけないほどの資産がありません。

これから積み立てていく段階です。いま値動きを小さくしても、小さくなるのは増え方のほうです。

これがなぜ私は債券に投資しないのかから変わっていない、私の立ち位置です。

4. 考えが変わるとしたら、どんなときか

ずっと同じことを言い続けるつもりはありません。数字が変われば、判断も変えます。

私が債券を検討しはじめるのは、こういうときだと思っています。

条件 いまの状況
実質利回りがはっきりプラスになる −0.35%(マイナス)
取り崩す時期が近づく まだ積み立て中
下落に耐えられなくなる いまは耐えられている

いちばん大きいのは1つ目です。

インフレが1.9%のままだとすると、個人向け国債 変動10年の表面利率が2.4%を超えたあたりから、実質がプラスに変わります。基準金利×0.66という決まりから逆算すると、10年国債が3.6%前後まで上がる必要があります。

いまの2.896%から、あと0.7ポイント。 ないとは言い切れない距離です。

だから私は「債券は一生いらない」とは思っていません。 ただ「いまはまだ、その時ではない」というだけです。

まとめ

金利が上がったニュースを見て、いったん自分の考えを疑ってみました。結果は変わりませんでした。

10年国債は2.896%だが、個人向け国債は1.95%(基準金利×0.66のため)
税金20.315%とインフレ1.9%を引くと、実質−0.35%
新窓販国債は10年で実質+0.49%だが、固定なので金利上昇に置いていかれる
シーゲルの長期国債は実質3.6%。いまの日本の債券はそこに届いていない
株式の実質6.9%との差は7.25ポイント

「金利が上がった」は事実です。でも「だから債券」にはまだ届いていません。

数字を出してみて、自分の判断に自信が持てたのが収穫でした。なんとなく続けるより、たまに疑ってみるほうが、長く続けられる気がします。

なお、「置いておくお金をどこに入れるか」は別の問題です。定期預金・社債・債券ファンドまで並べて比べたものは、定期預金と個人向け国債、どっちがいい?にまとめました。

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一緒に少しずつ学んでいきましょう!


てどりん
てどりんひとこと 「国債2.9%」のニュースに、正直ちょっと揺れました。でも実際に買えるのは1.95%で、税金とインフレを引いたらマイナス。数字にしてみて、ようやく納得できました。

※この記事は個人の感想です。金利・物価の数値は2026年9月9日時点で公表されている一次情報にもとづくもので、今後変動します。個人向け国債・新窓販国債の利率は毎月変わります。新窓販国債は、途中で売却する場合に元本割れの可能性があります。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。